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プラトンの『饗宴』において、宴に集まった人々は、(エロス)の意義について議論を交わす。
そこでソクラテスは、自分が若かった頃に、予言者で巫女でもあったディオティマから「愛の哲学」を教えられたと述べる。
以下にソクラテスはディオティマに愛についていろいろ聞こうとしている。

【ソクラテス】 — 『彼の父と母とは誰ですか』
と私は言った。
203b 【ディオティマ】 — 『それをお話しすると少々長くなりますが、しかしそれでもあなたのために話しましょう。
つまり、アプロディテが誕生した時に、その他の神々と一緒に、メチスの息子のポロスも誕生祝いをやっていたのです。
食事が終った後に、ペニアが、たいへんな御馳走だったので、物乞いをしにやってきて、戸口のところにいたのです。
すると、ポロスがネクタルに酔って——というのは酒はまだありませんでしたから——ゼウスの園にはいりこんで、参っていたものだから、眠りこみました。
203c で、ペニアは自分が貧乏なので、子どもをポロスから設けようと企んで、彼に添い寝をして、エロスをみごもったのです。
実にこのためにまたエロスはアプロディテの従者とも下僕ともなったのです、それはあの女神の誕生日を祝う祭りに生まれたからであり、また同時に(せい)(らい)美しいものの愛人であるところに、アプロディテが美しい神であるときているからなのです。
で、ポロスとペニアとの間の息子であるから、エロスは次ぎのような運命におかれているのです。
203d 第一に常に貧乏です、そして多くの人々の思っているように、柔かくて美しいどころか、堅くて、かさかさしていて、()(だし)で、宿なしで、いつも大地に寝る者、寝床のない者、戸口や路上で露天の下に眠る者で、母の本性を受けて常に欠乏の同居人なのです。
しかし他方、父に倣って美しいものや善いものを窺う者であり、勇敢で、()()(しゃ)()で、精力的で、巧みな狩人(かりゅうど)で、常に策を編み出す者です、また叡智の欲求者で、多策で、全生涯を通じて知恵を愛求する者、また巧みな魔術師、調剤師、専門家です。
203e そして性来不死であるということも、可死的であるということもないと追伸しなければならない。
一日のうちに花咲き、生きている時もあるが、死んでいる時もある、しかし父の本性によって、良策をうる時は、再び生きかえります。
しかし手に入れられたものはいつも洩れ出ています、従ってエロスは決して貧乏でもなければ、富裕でもありません、
また他方知恵と愚味との中間にあります。』

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注釈


ソクラテス

ソクラテス(Σωκράτης)は古代ギリシアの哲学者ではあるが、ソクラテス自身は著述を行っていないので、ここでは弟子の哲学者プラトンの著作である「(きょう)(えん)」での人物である。 戻る ↑


ディオティマ

饗宴意外でディオティマ(Διοτίμα)という名前をあげる史料は他にないが、そこではマンティネイア出身の巫女と預言者として現れる。
ディオティマに伴って、ルック(Luc)()ブリソン(BRISSON)の言葉によると対話では舞台に「新しい次元、つまり理解出来うるのが開かれる」哲学が登場する。ソクラテスは彼女について私に「愛について教えてくれた」と言う。 愛の誕生についてをソクラテスに語る。
名は、「ゼウスによって讃えられた」あるいは「ゼウスを讃えている」という意味である。
彼女の出身地とされるマンティネイア(Μαντίνεια)は、ペロポネソス半島にあった古代ギリシアのアルカディア(Ἀρκαδία)の都市国家であった。マンティネイアという固有名詞が古代ギリシャ語で「占い師」という意味のマンティス(mántis)に類似している。 戻る ↑


ポロス

ポロス(Πόρος)は古代ギリシャ語で「通過」、「道」と「便法」。 戻る ↑


ぺニア

ぺニア(Πενία)は古代ギリシャ語で「欠乏」、「貧乏」。 戻る ↑


ネクタル

ネクタル(nectar)はラテン語で「欠乏」、「不死」の意から、神々の飲み物、彼達の不死の元になるの飲み物。 戻る ↑


哲学

知恵を愛求するは同時に「哲学をする」意も含む。 戻る ↑