シュヴェルニー城での
アドニス
シュヴェルニー城の二階にある暖炉で展示されている、ジャン・モニエ画家が描いた《アドニスの死》を表れる絵画がある。
描かれている場面の元に、ローマ帝国時代に生きたラテン語で書いた作家のオウィディウスによる、一番有名な作品である「変身物語」の第10巻の一部として知られている文書である。
ウェヌスの愛にさらされたアドニスの悲劇的な死が語られている。
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変身物語の文書においてのアドニスの死
- 彼女は、このように忠告すると、白鳥たちに引かせた車で、
- 空を渡ってゆく。
- が、若者の勇気が、この忠告に逆らうのだ。
- たまたま、犬たちが、猪のまぎれない足跡をつけて、
- ねぐらから追い出した。
- そして、キニュラスの血を引く若者は 森から出ようとしているこの猪を、斜め横から、槍で貫いた。
- 荒々しい猪は、すぐに、みずからの血で染まった投槍を、そり曲がった鼻づらで払い落した。
- うろたえて、無事に逃げおおせようとしている相手を 追うと、そのまたくらに、根元まで牙を突き立て、
- 瀕死の傷を負った若者を、横色い砂のうえに打ち倒した。
- ウェヌス女神は、軽やかな車に垂って中空を分けていたが、 羽ばたく白鳥の翼にもかからわず、まだキュブロスには着いていなかった。
- 遠くから、瀕死のアドニスの呻きを聞きつけて、
- 白鳥たちをそちらヘ向けた。
- そして、息絶えようとしながら、
- みずからの血のなかで身もだえしている彼を見ると、 車から跳び下りた。
- 着物の腕元を引き裂き、髪をきかむしって、
- 思いもかけずに胸を打ちたたく。
- 「運命」の神々に文句をつけて、こういった。
-
「でも、すべてがあなたたちの力に 屈するというわけでもないのです。
-
アドニスよ、わたしの悲しみの思い出は、
-
いつまでも残るでしょう。
-
あたたの死にざまは、くり返し、舞台にのせられて、
-
年ごとに、わたしのこの嘆きを再現させてくれるでしょう。
-
いっぽう、あなたの血は、花に変わるでしょう。
-
むかし、冥界の女王プロルピナは、
-
ある女のからだをかんばしい薄荷に変えることが、
-
キニラスの血を引く英雄を変身させようとすることには、けちがつけられるのでしょうか?」
- こういうと、
- 若者の血に、かおり高い神酒をふりかけた。
- 血は、神酒に触れると、 ふくらんでいた。
- それは、たとえば、横色泥から 透明な泡がわきあがって来るさまをおもわせる。
- そして、一時間も経たないうちに、
- 血のなかから、同じ色の花が現われた。
- 強靭な皮の下に種子を隠し持っている、あの石榴が着ける花にそっくりだが、
- しかし、その花を覚でる期間は短かいのだ。
- 花の付き具合が悪く、軽すぎて落ちやすいために、
- アネモネというその名のもとになっている風が、これを散らすからだ。