大トリアノン宮殿での
フロラ
大トリアノン宮殿に展示されているジャン・ジューヴネが描いた〈フロラとゼフィルス〉絵画が「涼みの間」に見られます。
川沿いで、花の冠をかぶせようとしているひとりの天使や身を清めている妖精たちが近くに、何ともいえない春が漂う雰囲気なかで、西の微風である羽が付いている男のひとゼフィルスは、美しい女の人、フロラに花の籠を差し出しています。
この部屋のためににルイ十四世に注文されたこの絵画は、ローマ皇帝文学作家オウィディウスが著わした「祭暦」にある文書から、史料によって知られています。
祭暦において、オウィディウスがローマ暦を季節に応じて、天文や農事に関する行事や祭りを描きながら、自らを暦に司る司祭として自己言及し、あれこれ語るため、神々に直接お話しを聞くという文学的仕掛けが用いられています。
フロラが登場するこの第五巻ともなっている、同時にに当たる以下の文書でも、オウィディウスが女神に直接話しを掛けながら、183行から192行まで始まっています。
彼はまず彼女自身と彼女を記念するとに行なわれるフロラリア祭りについて情報を求めている。
絵画で表されている場面と直接な関係が視覚的に見えないのに、女神の魅力と神秘の意義、またジャン・ジューヴネの表しをより把握する為に役に立ちます。 それで、フロラは、答えとして、自分を「クロリス」と名のる至福者たちの島出身、ゼフィルスを戸惑う美しさを持つ妖精のひとりとして同一視しながら、自分を紹介しています。
彼は彼女を誘拐して、自分の嫁にさせて、そして女神として、花の主権を与えられたことも193行から222行までに語られていると同時に、フロラが伝統的に、春、美しさ、活気に満ちたホラ神女たちとカリス神女たちに囲まれている姿が表されていることになります。
「祭暦」において〈フロラとゼフィルス〉
- お花のお母さま、来て下され、喜ばしい遊びであなたを喜ばせましょう。
- 花の母なる女神よ、おいで下さい。
- 愉快な祭りでお祝いしましょう。
- 私はあなたを歌うときを先月から遅らせていました。
- あなたの祝祭がアプリリウス月に始まってマイユス月にまで及ぶからです。
- 先の月では月の終わり際に、のちの月では月の始まりとともに、あなたの祝祭があります。
- 月と月の境があなたのためにあり、あなたに捧げられているのですから、2つの月のどちらもあなたを讃えるにふさわしいのです。
- 「競技も、観客席の喝采が決める勝利の冠も今月のことですから、この歌のことですから、この歌も競技場の催しと進行を同じくしましょう。
- どうか、あなたがどのような女神か、御自身で教えて下さい。
- ひとびとの考えは当てになりません。
- 御自分の名前を説明されるのはあなた御自身が最適ですから」。
- このようにわたしが申しますと、私の問いに女神はこう答えました。
- 女神が話すと、口からは涼しい薔薇の息吹が洩れました。
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私の名前にあるギリシャの字がラテン語での発音によって害われることになって、私は、至福者たちが昔暮らしたといわれている恵まれ諸島の妖精のでしたもの。
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私の容姿がどのであったかなど、おこがましくてとても話せませんが、母が神様の婿殿を見つけて下さったのはこの容姿のためでした。
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春のこと、そぞろ歩きをしている私がゼフィルスの目に止まりました。
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私は引き返そうとしました。
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が、ゼフィルスは追いかけて来ます。
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私は逃げます。
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けれども、あちらの力のほうが強いうえに、兄弟のボレアスの前例があるので、娘をさらうのは天下御免であったのです。
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とはいえ、力ずくでしたことの償いに、彼は私に正妻の名をくれました。
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今この結婚に私はなんの不平もありません。
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私はいつも春を謳歌しています。
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いつでも一年でもっとも輝かしい季節、木々には葉が繋がり、大地はいつも牧草がおおいます。
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そして野には私の婚資である実り豊かな庭があります。
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そよ風が育み、泉から湧く澄み切った水が灌漑しています。
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私の夫はこの庭を優雅な花で満たし、「貴女に女神よ、花の主権を」と言ってくれました。
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何度も私は、いったい何色あるのかと、並んだ花を数えたいと思いましたが、出来ませんでした。
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数が及ばないほどたくさんだったのです。
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朝露の滴が葉からこぼれ落ち、色とりどりの草花が陽の光に暖かめられるや、ただちに彩鮮やかな衣を身にまとった季節神女ホラたちが集まり、私からの寄付を籠に摘んでゆきます。
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それにすぐさま優雅の神女カリスたちも加わって、冠を編み、編んだ冠を自分の神々しい髪に結ぼうとします。」