左翼パネル内面全景
左翼パネル内面に語りが続く。
ヘロデの宮殿で表わされているサロメの踊りの場面、左翼パネル内面
ヨハネを、信奉者たちのトラブルの騒ぎを起こさずに死なせるのを成功させるために、ヘロデが彼らを欺くよう、ごまかしを考える(マルコ、第6章・21~22節)。
「自分の誕生日の祝いに」ガリラヤの「高官や将校、ガリラヤの有力者などを招いて宴会」を催す。
「ヘロディアの娘サロメ」が姿を現して踊る。
《サロメの踊り》は左翼パネルの左上部にある宮殿の塔で行われている。メムリンクが塔の壁をこの場面を鑑賞者たちに見せるように省いた。
その上、壁龕での像が、ヘロデの不倫行為をおのめかすいくつかの不信心な人物、裸の女性のニ人の間の一人裸の男性が表わされている。
ヘロデがその踊りを気に入ったことを見せかけて、ヨハネの死の責任を免除するには言う(マルコ、第6章・22~25節):
「欲しいものがあれば何でも言いなさい」、
更に、
「お前が願うなら、この国の半分でもやろう"と固く誓ったのである。」
サロメが座を外して、母親に、
「何を願いましょうか」と言うと、
ヘロディアは、
「洗礼者ヨハネの首を」と言った。
早速、少女は大急ぎで王のところに行き、
「今すぐに洗礼者ヨハネの首を盆に載せて、いただきとうございます」と願う。
こうしてヘロデは,自分の意思に反するヨハネを死なせるように見える。
この語り筋のすべてが本当にヨハネを、信奉者たちのトラブルの騒ぎを起こさずに死なせるためのごまかしである証拠が、ヤコブス・デ・ウォラギネが説明している通り、もしサロメがヘロデに「自分の父のフィリポか自分の母のヘロディア」を頼んだなら、ヘロデがそれに同意出来ません(黄金伝説121章、第1段 注11 )。
このごまかしの唯一の目的は、ヨハネ殺害の責任をヘロデに負わせることを避けるためであって、ヘロデが自分の意思に反して要求に無理に応じたと歴史の視点におおいて偽って見せることです。
ヘロデ宮での洗礼者ヨハネの斬首の場面、左翼パネル内面
だから、歴史は悲劇的にも自ら成し遂げて行くのです。
ある衛兵は出て行き、牢の中でヨハネの首をはね
に行く(マルコ、第6章・28節)。